こんにちは。【ADHD夫を支える妻】はっさくです。
シリーズ【教育現場のグレーゾーンな子どもたち】③
元教師はっさくが、学校をはじめ様々な教育現場で出会った「生きづらさ」を抱えた子どもたち(または自分自身)の話をします。
・教室の「中心」から「周辺」に追いやられた子どもたち
・「普通」という枠からはみ出た子どもたち
・白にも黒にもなりきれない「グレーゾーン」な子どもたち etc.
発達障害児(グレーゾーン含む)はじめ、私が出会ったたくさんの子どもたちを紹介します。
※詳しくはこちらの記事↓
gray-zone-family.hatenablog.com
今日のテーマは「コンサータは誰のためのもの?」です。
コンサータをはじめ、ADHDの治療薬を服用する目的は何でしょうか。
信じがたいことですが、教育現場では「子どもが発達障害の治療薬を服用すること」の意味が、ときとして歪められることがあります。
◆ADHDの治療薬であるコンサータ
ADHDの治療薬で有名なものは、コンサータ、ストラテラ、インチュ二ブなどがあります。
コンサータは不注意に強い効果を発揮する薬です。
また、ストラテラは過集中を改善し、インチュニブは過剰な活動性や攻撃性を抑えるなどの働きがあります。
それぞれ効用が異なるため、症状に合わせて薬を併用することができます。
◆コンサータを服用する児童Sの話
あるとき、Sという小4の男の子に出会いました。
SはADHDと診断されていました。
Sのクラスは壮絶な学級崩壊を起こしており、彼はいつも混沌の中心にいました。
Sのクラスメイトや教職員への暴言や暴力はひときわ激しく、教員はいつもそのことで頭を悩ませていました。
Sは、症状によってコンサータを服用する日があります。
そんな日のSは、まるで別人みたいになります。
Sが薬を飲むと、まず授業中に大人しく着席するようになります。
暴言や暴力も幾分かましになり、目の鋭さも消え、物腰柔らかになります。
それを見た教員は、
「今日はSがすごく大人しい!薬を飲んできたのかもな!」
などと職員室で噂をしました。
◆「今日は何で薬飲まんかったんや?」
薬を飲んでいないときのSは、大人の手がつけられないほど暴れ回ります。
Sはよく、授業中に教室から飛び出し、物を壊しながら校内を駆け回りました。
そんなSに対する教員の目は、ひどく冷たいものでした。
「今日のSは薬を飲んでいない。毎日飲んできてくれないと困る」
職員室では、そんな声がちらほら聞こえてきました。
「S!今日は何で薬飲まんかったんや?」
中にはS本人に、こんな不躾な質問をする教員もいました。
◆「薬を飲むと自分が自分でなくなる」
S本人は、薬に対してどう思っているのか。
「体がだるい」
「気分が悪い」
「お腹が空かない」
「薬のせいで調子が悪くなる」
「薬を飲むと自分が自分でなくなるみたいで辛い」
これらは全て、Sの口から直接こぼれ出た言葉です。
薬を飲んだときのSは、心なしかいつもグッタリしています。
◆コンサータは誰のためのもの?
コンサータをはじめとする治療薬は、一体誰のためのものなのか。
Sとの出会いは、私にそんな疑問を強烈に植え付けました。
コンサータなどの薬を飲むと、ADHDの特性を持つ子どもの問題行動は目覚ましく改善されます。
集団をまとめあげる教員にとっては、それが好都合でもあります。
多忙を極める教員は、発達凸凹を抱えた1人1人の子どもに寄り添う時間的余裕がほとんどありません。
そんな中、薬ひとつで「問題行動」が改善されるのならば・・・と思ってしまうときがあります。
これまで複数校での勤務経験がありますが、どの現場においてもSのように扱われる子どもが存在しました。
「発達診断を受けさせたら、薬が処方してもらえるかもしれない」
「早く発達診断を受けて、薬を飲んでほしい」
「集団のためにも薬の服用は必須だろう」
そんな会話が平気でなされる現場のあり方に、ひどく心が痛みました。
コンサータをはじめとする治療薬は誰のためのものなのか。
それは、教員のためのものでも、集団のためのものでもなく、困り感を抱えた子ども自身のためのものだということ。
そのことを、多くの大人に知ってもらいたいです。
◆まとめ
今日は、「コンサータは誰のためのもの?」というテーマで、発達障害の治療薬の持つ意味が歪められてしまう教育現場の現状についてお話ししました。
薬の服用は、教員や集団のためではなく、困り感を抱えた子どもが少しでも生きやすくなるために行われるべきです。
教育現場の何気ない場面で見え隠れする、間違った大人の姿勢を変えていくこと。
それこそがインクルーシブ教育の第一歩だと考えています。
(^^)/